Vol.201 患者様をその気にさせる関わり方

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アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが1970年代初頭に報告したラビアンの法則』では、話し手が聴き手に与える印象の大きさは『言語情報:7%, 視覚情報:55%, 聴覚情報:38%』とされています。つまり「見た目が一番重要」で「話の内容は相手に7%しか伝わらない」とされる法則ですが、カリスマと呼ばれる先生達にはこの法則は関係がないと感じる今日此の頃です。

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先日、当院に岐阜脳卒中リハビリテーション研究会坪井祥一先生をお招きし、
学習のためのセラピスト」というタイトルで主に患者様との関わりかたについてリハビテーションスタッフを対象に講演をしていただきました。

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今回、坪井先生をお招きした理由はひとつ。

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「n=1の大切さを教えてくれるから」

これは坪井先生が主催する岐阜脳卒中リハビリテーション研究会に参加して感じました。
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今回の発表後に改めて感じたのは、普段の臨床のなかでの患者さんとの会話の中で、
"言葉の裏を読み解く能力の高さ"
です。

勝手な例えですが、

「今日は調子が悪いわー」

という言葉の裏には様々な原因が考えられます。

・風邪をひいた
・どこか痛みがある
・あなたとのリハビリはしたくない
・誰かと喧嘩した
・昨日、リハビリをやりすぎた
・ご飯が美味しくない
・仕事が上手くいってない

など間接的な原因はたくさんあるわけです。

しかし、ラピストが、
「調子が悪いんですねー。そのうち良くなりますよー。」

なんてことを無表情で言ったらどうでしょう??

"そんなセラピストに担当して欲しくないなー" と僕は感じてしまいます。

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坪井先生は、「患者さんの負の言葉をの言葉に変える魔術師」です。

リハビリの知識・技術を持ってもっていても効果を出せないセラピストはおそらく治療前までの過程がいまひとつなんでしょうね。そんなことを強く感じました。

色々な仮説を立ててそれをひとつずつ真剣に考えていく。

リハビリの治療もそうですが、コミュニケーションの中にも仮説検証作業に似たものがあると思いました。

ちょうど昨日は当院で遇セミナーがありました。

成功するスタッフの患者さまと接し方として以下のことが書かれていました。

① 専門的なことも分かりやすく言葉を変換して説明できる
② 患者さまを自分自身の家族や大切な人と同じように思いやりを持って接することができる
③ 患者さまからの無理な要望についても、何とか実現できる可能性を考える
④ 医療業界内外問わず、いろいろな知識を吸収しようとして、自分なりの情報収集法を持っている。

自分にとって大切な人のリハビリを自分が自信を持ってできるか。ってことを最近はよく考えます。

坪井先生が講義の中で話していた頭テクニックを本日実践してみました。

下肢キッキングを1セット終了したとき
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私:ビックリした表情で「なにか練習しました??

患者:「エッ どうかしました?

私:「力が前のときより強くなっているので
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患者:少し考えたあと「毎日、リハビリしているからかなー」と満面の笑み。

いつもは拒否のある方ですが、その後のリハビリもズムーズにすすめれました。
セラピスト側の表情ってものすごく大切です。

ハビリ終了後にこう聞いてみよう。

「今日のリハビリどうでした?」 

「明日はどんなことがしたいですか?」

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MUSTで
はなくWANTなのです。

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懇親会も盛り上がりました。
ありがとう坪井先生。

井先生がオススメしている10

①絵でみる脳と神経ーしくみと障害のメカニズム 第3版/馬場 元毅

絵でみる脳と神経 第3版―しくみと障害のメカニズム (JJNブックス)
馬場 元毅
医学書院
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僕がまだ、脳の機能に触れる前だった学生時代や新人の頃に、何度も読み返した、“思い出深い”一冊です。
何度も読み返しているせいか、多くのページにドッグイヤーやアンダーラインの後が…笑
元々は看護師向け雑誌の巻頭連載から始まったこの本は、脳のことを学び始めようとしている方を想定して書いてあるようで、信じられないほど分かりやすく記載されております。
これから脳のことをしっかりと学んでみよう、とお考えの方にオススメの一冊です。

②プロメテウス解剖学アトラス 頭部/神経解剖

プロメテウス解剖学アトラス 頭部/神経解剖
医学書院
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「脳は局在ではなく、システムで働いている」という事実は、今や定説と言えるのではないでしょうか。
ただ脳のシステムを勉強する際に、個別の機能局在を深く知っておくと、より詳細に理解を深めることができます。
特にプロメテウスは全ページ、カラーで記載されており、各脳部位を三次元的に理解することを助けてくれます。
脳の解剖学的位置関係を知る上では、最も優れた一冊の一つと言えるでしょう。

③科学的根拠に基づく理学療法 理論を実践に生かすヒント/潮見 泰藏(監訳)

科学的根拠に基づく理学療法 理論を実践に生かすヒント
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EBM(Evidence Based Medicine)という言葉がもはやスタンダードとも感じられる昨今、リハビリテーションに関する様々な知見が、膨大に世に排出されてきます。
主に2000年前後の比較的新しい文献を中心にreviewしているこの本は、一昔前の経験則からなる神経生理学的なリハビリテーション介入を一部批判的に捉え、科学的根拠に基づく神経リハビリテーションの方向性を示してくれています。
例えば近年の海外論文では、痙性(陽性徴候)よりも、筋力低下や巧緻性の低下(陰性徴候)の方が、麻痺の能力障害に対する主要因であると言われているように。
今現在の、自分の運動療法介入に、行き詰まりや疑問を感じている方には、一つの壁を乗り越えさせてくれる、そんな一冊となるかもしれません。

④高次脳機能障害マエストロシリーズ② 画像の見かた・使いかた/三村 將・他

高次脳機能障害マエストロシリーズ(2)画像の見かた・使いかた
三村 将 早川 裕子 石原 健司 浦野 雅世
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脳血管障害に対する運動療法介入を行う上で、高次脳機能障害の存在は、目をそらすことのできない最も重要な臨床症状の一つです。
特に、我々理学療法士が難渋する患者様のほとんどが、高次脳機能障害を合併していることが多く、この高次脳機能障害の理解が、患者様の運動機能回復へ導いてくれる一端となり得ます。
誰もが知りたい脳画像の見かた・使い方を大変分かりやすく教えてくれるこの本は、驚くほど単純明快に記載されており、初めて脳画像に触れる方でも理解しやすくなっています。
ウン万円かけてセミナーに通う前に2800円+税で、手軽に脳画像を学んでみてはいかがでしょうか⁈笑

⑤目と精神 神経心理学コレクション/彦坂 興秀

眼と精神―彦坂興秀の課外授業 (神経心理学コレクション)
彦坂 興秀 河村 満 山鳥 重
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「最も気になる脳部位は?」と聞かれたら、僕が迷わず答えるのが「大脳基底核」です。
本のタイトルからは想像も出来ませんが、この本の内容は主に大脳基底核の知見について書かれており、作者の彦坂 興秀 先生は大脳基底核研究の世界的権威の一人でもあります。
特に脳血管障害で多く見られる“被殻出血”や、黒質変性に伴うパーキンソン病は、大脳基底核関連の疾患でもあり、臨床上からみても大脳基底核は身近な存在であることを気付かせてくれます。
“知っているようで、あまり知らない「大脳基底核」”を、改めて勉強しなおすキッカケを与えてくれた大切な一冊です。

⑥前頭前皮質 前頭葉の解剖学,生理学,神経心理学/福居 顯二(監訳)

前頭前皮質―前頭葉の解剖学、生理学、神経心理学
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新興医学出版社
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先程の大脳基底核と同じくらい、僕が気になる脳部位。
それが前頭前皮質です。
前頭前皮質は人間が、独自の文化、社会、価値観を形成し、自分の意思で持って人生を選択し、切り開いていく…そんな彩りある過程の中で、最も活発に働いてくれる脳部位です。
いわば脳の“中央実行機関”とも呼ばれる前頭前皮質は、まさに“自分自身”とも言えるのではないでしょうか。
特に行動の選択、抑制、判断、決定、注意、ワーキングメモリ、情動など、リハビリテーションに馴染みの深い内容が記載されております。
運動療法に深みを持たせたいと思っているアナタに、オススメの良書です。

⑦リハビリテーションのための脳・神経科学入門/森岡 周

リハビリテーションのための脳・神経科学入門
リハビリテーションのための脳・神経科学入門

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森岡 周
協同医書出版社
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あまりに有名な一冊で、すでにお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今や、脳卒中のリハビリは「ニューロリハビリテーション」時代を迎えている、と言っても過言ではありません。
この本によって、一度勉強して覚えた脳のそれぞれ知識が、「そうか、それはそういうことだったのか」と、一つのまとまりとして繋げてくれる感覚を覚えることができます。
脳機能に基づくリハビリテーションを考える上では、確実に最も避けては通れない、一冊であると思います。
2005年に生み出された傑作は、数年経過した今でも、色褪せない輝きを纏っています。

⑧リハビリテーションのための認知神経科学入門/森岡 周

リハビリテーションのための認知神経科学入門
森岡 周
協同医書出版社
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もう一冊、森岡 周目 先生の本を紹介させて頂きます。
先程紹介した前書(リハビリテーションのための脳・神経科学入門)の続編とも言える内容であり、脳科学的知見を臨床に活かすべく、応用的な内容となっております。
正直申し上げまして、「~入門」といえるほど容易い内容ではなく、まっさらな自分で対峙しても、突っぱねられる程の威力は持ち合わせているツワモノです。
定期的に読み返すことで、一度は気付かなかった重要性にハッとさせられ、僕自身驚きを隠せません。
この本を何度も読むことで、何年もかけて森岡 周 先生の同じ講義を受けている、リピーターの感覚が味わえます。笑

⑨リハビリテーション臨床のための脳科学~運動麻痺治療のポイント/富永 孝紀・他

リハビリテーション臨床のための脳科学 ~運動麻痺治療のポイント
富永 孝紀 市村 幸盛 大植 賢治 河野 正志
協同医書出版社
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「こんな本、待ってました!」と言わんばかりか、本当に言ってしまった僕は、
この一冊に喰い入るように夢中になり、あっとゆう間に読み終えてしまいました。
まさに“脳科学と臨床との接点”を描き出してくれたこの一冊は読めば納得、なんと著者は全員臨床家(しかも皆さん30代前半あたり)‼
実際の臨床家が、現場で何を考え、どうしているのか…そんな最前線かつ、リアリティある内容が、今自分の手の上に。
「脳機能を応用するって言うけど、じゃあ実際にどうするの?」とお困りのアナタ!
すでにこの本で手に入るかもしれません。笑

⑩ なぜあの人は人前で話すのがうまいのか/中谷 彰宏

なぜあの人は人前で話すのがうまいのか
中谷彰宏
ダイヤモンド社
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最後にリハビリテーション関連ではない一冊をご紹介したいと思います。
僕は「岐阜脳卒中リハビリテーション研究会」内の定期勉強会で、プレゼンテーターを勤める際に、最も大切にしていることの一つに、人前で話す際の“心構え”があります。
自分が伝えたい内容を、いかに魅力的に伝えられる“自分”でいられるか、そんなことを出来ないなりに考え試行錯誤しています。
話すのがうまい人には、やはり共通点があり、何かしらのテクニックがあるようです。
僕は“等身大の自分”ではなく、自分が感じた“話がうまい人を演じる”つもりで、当日のプレゼンに臨んでいます。
人前で話す機会がお有りの方には、当日に向かう自分の“心構え”を教えてくれる、そんな一冊となるかもしれません。

坪井先生が今後発表される勉強会の案内

ASRIN 明日から臨床で使える勉強会
日時:2013年7月28日 (日) 10:00~17:30
場所:ウインクあいち 大ホール
住所:愛知県名古屋市中村区名駅4丁目4-38

10:00~11:30
テーマ:側頭葉のリハビリテーション
八千代病院 作業療法士 細川 寛将先生

11:40~13:10
テーマ:頭頂葉の認知機能的役割
江南厚生病院 作業療法士 吉田 慎一先生

14:00~15:30
テーマ:前頭葉のリハビリテーション
岩砂病院 理学療法士 坪井祥一先生

15:40~17:10
テーマ:小脳のリハビリテーション
あいちリハビリテーション病院 理学療法士 小松洋介先生

定員:300名 (先着順)
参加費:5000円 (事前振込み)

素晴らしいメンバーですね。
300名超え間違いなしの予感。

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