Vol.280 タイで最先端のリハビリテーション室(バムルンラード病院) タイで働く理学療法士

ディカルツーリズムという言葉をここ数年で耳にすることが増えてきているのではないだろうか?メディカル(医療の)+ツーリズム(観光)=医療の観光であり、患者がより良い医療を求めて海外に渡ることを意味する。ここ数年で市場は拡大し約8兆円と言われている。日本人がわざわざ他国の医療にお世話になるイメージはないが、途上国では治療不可能な手術を求めたり、医療費も先進国よりも安い場合があり富裕層患者などが多く利用している。タイでは、バンコク病院、バムルンラード病院、サミティヴェート病院などが有名である。設備が高級ホテル並みという噂は聞いていたが、実際見学してみるとまさに噂通りで、とにかく綺麗、丁寧、そして治療費もお高い。このような富裕層をターゲットとした病院のリハビリテーション室は実際どうなのかという疑問があったが、先日、バムルンラード病院のリハビリテーション室を見学させてもらい、タイにおけるリハビリテーション格差を自分の目で確かめることができた。

バムルンラード・インターナショナル病院

1980年に開業し、外国人患者がおよそ4割を占める国際病院。医療のグローバル・スタンダードを示す医療機能評価JCIをアジアで初めて取得した。日本人医師も在籍し、日本でリハビリテーション専門医として働いていた先生に今回リハビリテーション室を案内していただいた。タイではまだ療法士の数も少なく、リハビリテーションを受けることができない方が多い中で富裕層をターゲットとした病院でのリハビリテーションは私が普段タイでみている風景ではなく異質であった。日本ではこれほどの差別化は難しいだろう。

バムルンラード・インターナショナル病院 日本語ページ
http://www.bumrungrad.com/japanese


私が感じた3つの特徴
① 1人の患者に理学療法士とアシスタントの2名で歩行訓練
② 東南アジア唯一のロボット訓練
③ 日本の施設と遜色ないリハビリテーション室

噂では聞いていたが、少しでも転倒リスクのある患者に対しては、療法士とアシスタントの2名で歩行訓練を行なっていた。それぞれユニホームが違うためどちらが療法士であるかはすぐに分かる。またタイでは転倒予防で患者の腰に介助ベルトを巻くことが多く、こちらの病院でも巻いていた(写真はサンプル画像)。詳しく聞けなかったが、患者の障害層は医療ツーリズムで来ている方が多いので少し特徴的である。

医療ツーリズムの主なカテゴリー

詳しく知らなかったが、この文献によると医療ツーリズムの対象患者は美容関係の利用者が多いようだ。このような方にはリハビリテーションは行なっていないと思いたい。ただ手術後の皮膚の癒着に対してのリハビリテーションは皮膚の運動学さえ分かっていればあってもいいのでは?と思う。

上図の表は以下より引用
http://file.icsead.or.jp/user03/1165_238.pdf

ビックリ仰天。
このロボットは初めてみたが、それもそのはず東南アジアでは唯一のスイス製のロボットだった。これ一台で様々なシチュエーションのリハビリテーションが行なえる。免荷式トレッドミルの機能だけではなく、階段昇降練習、足圧を画面に写しながらのバランス練習など多彩。セラピストもこの機器を扱うには一定のトレーニング期間が必要で全員が操作できるわけではないとのこと。その他にもHALなどのロボットもこのような病院には進出してきているとのことだった。どこの国でもロボットも治療の一道具として、患者が良くなるのであればしっかりと適用と操作方法を覚えなければなりません。どれだけ適応患者がいるのかは不明。

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日本のリハビリテーション室とさほど変わらない印象で、スタッフは非常に勤勉な印象を受けた。後からタイ人の知り合いに聞いたところ、バムルンラードに療法士として就職するには狭き門でその分お給料も高いとのこと。さらにリハビリテーションを実施した患者数でさらに上乗せされる仕組みのようだ。月5万バーツ(150000円)くらいもらっているのでしょうか?(タイ全土平均は35000円)

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私が感じたことは、BOPビジネスに限らず、リハビリ×企業は色々可能性があるのではないかと考えさせてもらった。医療分野では、「すべての人に医療を提供する方法」、保健分野では「衛生的なトイレを使って不可触民を解放」がケーススタディーとして書かれているが、規模がでかすぎて参考にするにはちょっと無理がある。

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