Vol.287 タイには義肢装具士が100人だけ?

同期隊員の阿部さん(ラオスのサッカー隊員)が紹介していたので早速読んでみました。BOPビジネスのマニュアル本を何冊か読みましたが、こちらの方がよっぽど参考になる本でした。そして改めてボトムアップの重要性、タイの現場で一定期間活動する青年海外協力隊だからこそ感じるありのままの情報を発信していく大切さを感じました。

日本から支援いただいた下肢装具をタイの現場に届けているこちらのサイトも応援宜しくお願いします。今後、拡大していく予定です。

「途上国にリハビリ道具を届けませんか?」

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本日はタイの義肢装具士の現状を先月のマヒドン大学シリントン義肢装具学校の見学と合わせて共有します。

タイのマヒドン大学医学部義肢装具学科でClinical Mentorとしてご活躍されている矢田盛夫先生に話しを伺ったところ、タイでは義肢装具士の国家試験が法的に施行されたのが5年前で、国内唯一(日本は11校)のマヒドン大学の義肢装具学科を卒業しなければなりません(現在の卒業生は90名程度)。元々技術者で経過措置期間に国家試験に合格した方もいますが数は圧倒的に不足しているとのことでした。タイでは現在の日本のように義肢装具会社が病院や施設を訪問して営業することはないので、義肢装具作製施設が併設されている病院に行くことができない人は義肢装具を作製することができません。価格もプラスチック短下肢装具は1800バーツ(約6000円)、両側金属支柱付き短下肢装具は8000バーツ(約25000円)ですが、両側金属支柱付き短下肢装具の場合はどの保険を使用しても6000バーツ(約18000円)までの補助しかでないため、自費が発生します(プラスチック短下肢装具の場合は無料)。また療法士のなかで装具療法という治療の選択肢も優先順位が低いことがタイ国内では考えられます。装具を装着し街中を歩く片麻痺者がみれるのはかなり先のような気がします。そのため今、私にできることは日本の装具を使用してもらったり、安価で作製できないか検討したりとタイの療法士、義肢装具士に積極的にアピールしていていくことです。

① 学校は何校?

1

*国内唯一(日本は11校)のマヒドン大学の義肢装具学科を卒業しなければなりません(現在の卒業生は90名程度)。確かマレーシアも1校だけだった気がします。


② 義肢装具士は何人?

A:CPO(有資格者)
100人程度(知識・技術高い)
*ほとんどがバンコクに勤務。

B:製作技術者(テクニシャン)
200人程度。
この割合がタイでは多い(知識・技術まあまあ)。*テクニシャンのバックグラウンドは大学教育修了者からワークショップで働きながら技術を体得した者まで様々のようだ(以下文献引用)。

参考文献

タイ義足提供モバイルユニットの事例について -その有効性の検討-
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaih/23/4/23_4_281/_pdf

C:アシスタント
:(知識・技術乏しい)


レベルでおよそ3段階に分かれており、3つ合わせても300人~500人くらいではないでしょうか?

③ 装具の価格は?

P-AFO:約6000円

両側金属支柱付き短下肢装具:約25000円

*保険を使用すれば、P-AFOは無料。

④ 保険の適応は?

あり。

*各種保険によって限度額が異なる。両側金属支柱付き短下肢装具はどの保険でも全額は支払われず、必ず自己負担金が発生する。

⑤ 日本と違うところは?

現在の日本のように義肢装具会社が病院や施設を訪問して営業することはないので、義肢装具作製施設が併設されている病院に行くことができない人は義肢装具を作製することができない。

見学

マヒドン大学シリントン義肢装具学校

流石、ISPOカテゴリーⅠ(義肢装具士教育の国際的標準化認定で一番高い)の認定を受けているだけあり、卒業生のタイ人が非常に勤勉である印象をうけました。後、タイのプラスチックは安いのではないかと勝手に思っていましたが、プラスチックは輸入品を使用してるのでそこまで安く作成することは難しいとのことでした。安いプラスチックでは色々問題もあるようです。その他、日本財団は義肢装具士の育成に力をいれており、タイ、スリランカ、フィリピン、ミャンマーなどを支援しているようです。

その他、タイにはタイ義足財団があり、義足を無料で提供したり、義肢製作技師の訓練なども行なっています。

http://www.prosthesesfoundation.or.th/th/

みんな真剣です。

スタッフも真剣です。

私が活動先で感じる義肢装具のこと

タイでは全人口の約80% が農村部に居住してますが、都心部にしか義肢装具士はいない現状です。まだ装具が普及していない中で、義肢装具のフォローアップという考え方はほど遠く、故障したらもうおしまいです(PO,PTいない)。実際、私の施設でもベルクロすら破れたら、新しいものを手にいれることが難しいので、ゴムバンドなどで利用者自身が工夫して代用していたりする。シンプルな構造ではないとなかなか普及は厳しいようです。また装具を使用して歩ける利用者もでてきましたが、あくまで訓練レベル。生活レベルで導入するには高い壁(バリアフリーなど)があります。義足を装着して歩いている利用者は私の活動先にはいませんが、松葉杖や固定型歩行器を使用し下肢切断の利用者も歩行は自立している人がほとんどです。

寄稿

http://reharepo.com

タイの障害者運動のことを少し書かせていただきました。

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