Vol.156 リハビリテーション分野におけるPusher現象の考え方

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“背中を押す” のように “押す”=”push”(プッシュ)にはプラス(+)の意味が含まれていることが多いが、リハビリ場面においてはマイナス(-)な事もある。その存在は“Pusher”さんだ。確かに押すがその押す方向を誘導してあげるために僕達が存在する。患者さんにとってプラスになれるように頑張ろう。

Pusherさんとは退院まで仲良くなれない場合がおおく、リハビリテーションの治療成績が悪くなる一要因であろう。

少しでも仲良くなるためにまとめる。

名称

色々ある。
Pusher syndrome= 押す症候群、Pusher現象、contraversive pushing、pushingなど表記が様々である。網本先生の文献はPusher(押す)現象とある。

定義

Davies の「あらゆる姿勢で麻痺側へ傾斜し、自らの非麻痺側上下肢を使用して床や座面を押して、正中にしようとする他者の介助に抵抗する」が有名。

発生頻度

5%から50%と言われており、主に急性期で回復する場合が多い。網本先生によると、USNは約30%、Pusher現象はその半分の15%くらいと言われている。

責任病巣

内包、補足運動野、上頭頂小葉、淡蒼球、視床後外側、中心後回、広範囲な病巣など色々と言われているが、どこも直接的な関係はないとされている。結局、分かっていないのだ。

評価法

Pusher重症度分類

Pusher重症度分類

Scale of contraversive pushing (SCP)

Scale of contraversive pushing (SCP)

http://plaza.umin.ac.jp/~gpt/SCP.pdf
このブログから評価法ダウンロードできます。SCPが現在は主流。

Burke Lateropulion Scale (側方突進スケール)

SCPやPusher重症度分類より、もう少し詳しく評価している。背臥位・座位・立位・移乗・歩行の5項目からなり、抵抗力をみる評価。3点以上をPusher現象あり、最重症度は17点。

詳しくは、こちらから

http://medicalfinder.jp/doi/abs/10.11477/mf.1551104170?src=recsys
PTジャーナル 特集 脳のシステム障害と理学療法 pp. 19-26 視床・頭頂葉系の障害と理学療法

治療

発生メカニズムも完全に分かっていないため、正しい治療法も当然分かっていません。ただし、視覚が姿勢保持の安定に関わっていることは間違いなさそうなので、「視覚的手がかり」「垂直指標」はある程度、有効であることは予想がつく。

① ”こんな経験ありませんか?”

Pusherの患者さんが立ち上がろうとすると、健側下肢が写真のように前方の外側へ出てしまう。(トン、トン、トンっといった具合で小さく3歩くらい)

pusher現象 対策

 

「どうして足を前に出すのですか?」と聞くと

「分からない」とたいてい返事がきます。

そんな方に「足を前に出さないでください」なんて言っても効果は低いです。

こういった場合は、逆に支持基底面を狭くして、継ぎ足にすると良いらしいです。

さらに、このような方は、うまく動作を言語化できない患者さんが多い印象です。

言語化できるような難易度のタスクに変えていく必要があります。

どの動作も言語化できないとなかなか治療成績はあがらないと思っています。

 ”こんな経験ありませんか?”

臥位でも健側下肢のtoneは高く、突然手を離してもその位置で固まる。力が抜けない。足関節は底屈位となっている。

pusher現象 対策 リハビリ

こんなときは患者さんの足底にセラピストの手掌を当てて、「僕の手の動きについてきて下さい。押したらひく、引いたら押してください。やさしく触れる程度の感覚を保って下さい」と指示をいれます。

たいてい股関節90°くらいで抵抗感が増します。これが立ち上がりの際にお辞儀をしても、健側殿部での体重支持ができず、突っ張ってしまう一原因だと思います。臥位で90°以上の股関節屈曲がスムーズにできるようになったらお辞儀の際の抵抗感は少なくなり離殿につなげられると思います。圧に対して正常な反応が出来るようになることが重要です。

③ ”こんな経験ありませんか?”

立位練習を行うと「こわい、こわい」と恐怖心を訴える。

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壁にもたれた状態で接触面を増やしてあげることで安心感をあたえて訓練を行うことも大切です。抵抗感は少なくなります。

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メカニズムがしっかり分かっていないからこそ治療も様々である。色々試して効果がありそうな訓練を選択していきたい。

最高にオススメする本

 

傾いた垂直性―Pusher現象の評価と治療の考え方
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Pusher現象について非常に細かくまとまっている。ここまでPusher現象を取り上げた本は今までなかったはずだ。値段も安いのでオススメだ。

 

井先生がオススメしている10

①絵でみる脳と神経ーしくみと障害のメカニズム 第3版/馬場 元毅

絵でみる脳と神経 第3版―しくみと障害のメカニズム (JJNブックス)
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僕がまだ、脳の機能に触れる前だった学生時代や新人の頃に、何度も読み返した、“思い出深い”一冊です。
何度も読み返しているせいか、多くのページにドッグイヤーやアンダーラインの後が…笑
元々は看護師向け雑誌の巻頭連載から始まったこの本は、脳のことを学び始めようとしている方を想定して書いてあるようで、信じられないほど分かりやすく記載されております。
これから脳のことをしっかりと学んでみよう、とお考えの方にオススメの一冊です。

②プロメテウス解剖学アトラス 頭部/神経解剖

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「脳は局在ではなく、システムで働いている」という事実は、今や定説と言えるのではないでしょうか。
ただ脳のシステムを勉強する際に、個別の機能局在を深く知っておくと、より詳細に理解を深めることができます。
特にプロメテウスは全ページ、カラーで記載されており、各脳部位を三次元的に理解することを助けてくれます。
脳の解剖学的位置関係を知る上では、最も優れた一冊の一つと言えるでしょう。

③科学的根拠に基づく理学療法 理論を実践に生かすヒント/潮見 泰藏(監訳)

科学的根拠に基づく理学療法 理論を実践に生かすヒント
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EBM(Evidence Based Medicine)という言葉がもはやスタンダードとも感じられる昨今、リハビリテーションに関する様々な知見が、膨大に世に排出されてきます。
主に2000年前後の比較的新しい文献を中心にreviewしているこの本は、一昔前の経験則からなる神経生理学的なリハビリテーション介入を一部批判的に捉え、科学的根拠に基づく神経リハビリテーションの方向性を示してくれています。
例えば近年の海外論文では、痙性(陽性徴候)よりも、筋力低下や巧緻性の低下(陰性徴候)の方が、麻痺の能力障害に対する主要因であると言われているように。
今現在の、自分の運動療法介入に、行き詰まりや疑問を感じている方には、一つの壁を乗り越えさせてくれる、そんな一冊となるかもしれません。

④高次脳機能障害マエストロシリーズ② 画像の見かた・使いかた/三村 將・他

高次脳機能障害マエストロシリーズ(2)画像の見かた・使いかた
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脳血管障害に対する運動療法介入を行う上で、高次脳機能障害の存在は、目をそらすことのできない最も重要な臨床症状の一つです。
特に、我々理学療法士が難渋する患者様のほとんどが、高次脳機能障害を合併していることが多く、この高次脳機能障害の理解が、患者様の運動機能回復へ導いてくれる一端となり得ます。
誰もが知りたい脳画像の見かた・使い方を大変分かりやすく教えてくれるこの本は、驚くほど単純明快に記載されており、初めて脳画像に触れる方でも理解しやすくなっています。
ウン万円かけてセミナーに通う前に2800円+税で、手軽に脳画像を学んでみてはいかがでしょうか⁈笑

⑤目と精神 神経心理学コレクション/彦坂 興秀

眼と精神―彦坂興秀の課外授業 (神経心理学コレクション)
彦坂 興秀 河村 満 山鳥 重
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「最も気になる脳部位は?」と聞かれたら、僕が迷わず答えるのが「大脳基底核」です。
本のタイトルからは想像も出来ませんが、この本の内容は主に大脳基底核の知見について書かれており、作者の彦坂 興秀 先生は大脳基底核研究の世界的権威の一人でもあります。
特に脳血管障害で多く見られる“被殻出血”や、黒質変性に伴うパーキンソン病は、大脳基底核関連の疾患でもあり、臨床上からみても大脳基底核は身近な存在であることを気付かせてくれます。
“知っているようで、あまり知らない「大脳基底核」”を、改めて勉強しなおすキッカケを与えてくれた大切な一冊です。

⑥前頭前皮質 前頭葉の解剖学,生理学,神経心理学/福居 顯二(監訳)

前頭前皮質―前頭葉の解剖学、生理学、神経心理学
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新興医学出版社
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先程の大脳基底核と同じくらい、僕が気になる脳部位。
それが前頭前皮質です。
前頭前皮質は人間が、独自の文化、社会、価値観を形成し、自分の意思で持って人生を選択し、切り開いていく…そんな彩りある過程の中で、最も活発に働いてくれる脳部位です。
いわば脳の“中央実行機関”とも呼ばれる前頭前皮質は、まさに“自分自身”とも言えるのではないでしょうか。
特に行動の選択、抑制、判断、決定、注意、ワーキングメモリ、情動など、リハビリテーションに馴染みの深い内容が記載されております。
運動療法に深みを持たせたいと思っているアナタに、オススメの良書です。

⑦リハビリテーションのための脳・神経科学入門/森岡 周

リハビリテーションのための脳・神経科学入門
森岡 周
協同医書出版社
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あまりに有名な一冊で、すでにお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今や、脳卒中のリハビリは「ニューロリハビリテーション」時代を迎えている、と言っても過言ではありません。
この本によって、一度勉強して覚えた脳のそれぞれ知識が、「そうか、それはそういうことだったのか」と、一つのまとまりとして繋げてくれる感覚を覚えることができます。
脳機能に基づくリハビリテーションを考える上では、確実に最も避けては通れない、一冊であると思います。
2005年に生み出された傑作は、数年経過した今でも、色褪せない輝きを纏っています。

⑧リハビリテーションのための認知神経科学入門/森岡 周

リハビリテーションのための認知神経科学入門
森岡 周
協同医書出版社
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もう一冊、森岡 周目 先生の本を紹介させて頂きます。
先程紹介した前書(リハビリテーションのための脳・神経科学入門)の続編とも言える内容であり、脳科学的知見を臨床に活かすべく、応用的な内容となっております。
正直申し上げまして、「~入門」といえるほど容易い内容ではなく、まっさらな自分で対峙しても、突っぱねられる程の威力は持ち合わせているツワモノです。
定期的に読み返すことで、一度は気付かなかった重要性にハッとさせられ、僕自身驚きを隠せません。
この本を何度も読むことで、何年もかけて森岡 周 先生の同じ講義を受けている、リピーターの感覚が味わえます。笑

⑨リハビリテーション臨床のための脳科学~運動麻痺治療のポイント/富永 孝紀・他

リハビリテーション臨床のための脳科学 ~運動麻痺治療のポイント
富永 孝紀 市村 幸盛 大植 賢治 河野 正志
協同医書出版社
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「こんな本、待ってました!」と言わんばかりか、本当に言ってしまった僕は、
この一冊に喰い入るように夢中になり、あっとゆう間に読み終えてしまいました。
まさに“脳科学と臨床との接点”を描き出してくれたこの一冊は読めば納得、なんと著者は全員臨床家(しかも皆さん30代前半あたり)‼
実際の臨床家が、現場で何を考え、どうしているのか…そんな最前線かつ、リアリティある内容が、今自分の手の上に。
「脳機能を応用するって言うけど、じゃあ実際にどうするの?」とお困りのアナタ!
すでにこの本で手に入るかもしれません。笑

⑩ なぜあの人は人前で話すのがうまいのか/中谷 彰宏

なぜあの人は人前で話すのがうまいのか
中谷彰宏
ダイヤモンド社
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最後にリハビリテーション関連ではない一冊をご紹介したいと思います。
僕は「岐阜脳卒中リハビリテーション研究会」内の定期勉強会で、プレゼンテーターを勤める際に、最も大切にしていることの一つに、人前で話す際の“心構え”があります。
自分が伝えたい内容を、いかに魅力的に伝えられる“自分”でいられるか、そんなことを出来ないなりに考え試行錯誤しています。
話すのがうまい人には、やはり共通点があり、何かしらのテクニックがあるようです。
僕は“等身大の自分”ではなく、自分が感じた“話がうまい人を演じる”つもりで、当日のプレゼンに臨んでいます。
人前で話す機会がお有りの方には、当日に向かう自分の“心構え”を教えてくれる、そんな一冊となるかもしれません。

本を出版しました!!

「日本人」で生まれた時点で、おみくじなら、大吉を引いたようなものだ。一方で、「このまま日本にいて大丈夫なのか?」とも、タイの成長スピードを肌で感じて思った。この本を通じて、凡人の岩田ができるなら、自分にも何か出来るはずだ、やってみようと行動に結びついてくれたら大変嬉しい。 岩田でも出来たことは、皆さんなら、もっと出来る!!