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本年も宜しくお願いします。今年の目標も決まりブログも最低週1回は更新していきます。去年より今年はアウトプットの仕方を工夫していきたいと思います。以前、パッション坪井氏が紹介してくださった本「なぜあの人は人前で話すのがうまいのか」(ダイヤモンド社)を読み終えました。少しずつ実践していきたいです。
さて「リハビリテーション分野におけるパーキンソン病の再考」も今日で最後です。
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Contents
パーキンソン病における運動療法
本日は「運動療法」について共有していきます。
評価についてはこちらから
薬についてはこちらから
認知機能についてはこちらから
Brrakによる病気分類についてはこちらから
四大徴候についてはこちらから
大脳基底核の機能についてはこちらから
勝手な解釈ですが、パーキンソン病の運動療法の考え方として大事なことは「ブレーキの働きを緩める運動」ではないでしょうか?
2011年にようやく有用性が認められました。
http://www.movementdisorders.org/monthly_edition/2012/02/EBM_Motor_Symptoms.pdf
The Movement Disorder Society Evidence-Based Medicine Review Update: Treatments for the Motor Symptoms of Parkinson’s Disease
どんなリハビリテーションが有効なのか?
どんなリハビリテーションが有効なのでしょうか?
「パーキンソン病治療ガイドライン2011」では下記のようにまとめられています。
①「運動療法が身体機能、健康関連QOL,筋力,バランス,歩行速度の改善に有効である(グレードA)」
②「外部刺激,特に聴覚刺激による歩行訓練で歩行は改善する(グレードA),また,音楽療法も試みるとよい(グレードC)」
③「運動療法により転倒の頻度が減少する(グレードB)」
療法別では、理学療法の介入のみ有用性が認められています。
では認められたのはどんな内容かと言うと、
①専門の理学療法士の指導による、ストレッチング、ウォーキング、従来型の運動器具の使用を含む。
②キュー(Cue)、注意に焦点を当てた運動戦略トレーニング
③形式化されたパターン運動:気功、太極拳
追記 コクランレビュー(2013,2014)
理学療法の効果としては、歩行速度、耐久性に対する即時効果程度。
無動、姿勢反射障害に対するリハの効果は多少見られるが、それ以外は、なかなか厳しいのが現状。
長期効果に関しては、なかなか厳しい。
パーキンソン患者は転倒が多い
ところで、パーキンソン病患者は転倒が非常に多いことが知られています。
ある研究では、過去1年間に80%の患者が転倒を経験しており、H-Y stageⅢとⅣでは約30%において転倒時骨折が見られた。骨折として大腿骨骨折、転倒場所は居間が多い (眞野 1999).
とっさの一歩が出にくいことを考えると、躓いたら最後かもしれませんね。
戦略としては、環境設定、躓く前になんとかしてしまおう、といったところでしょうか?
なぜすくみ足は出現するのか?
転倒の原因であるすくみ足ですが、なぜ起こるのでしょうか?
これは今もはっきりとは分かっていません。
ただ、すくみ足を改善する方法として、みなさんも臨床上、経験があるのではないでしょうか?
外的刺激を利用する方法があります。
聴覚刺激:メトロノーム、リズミカルな音楽
視覚刺激:模様、床の線
体性感覚刺激:タッピング
効果が出るメカニズムとしては、
まず随意運動に関する経路として①内発性随意運動系と②外発性随意運動系があります。
内発性随意運動系
大脳辺縁系 → 基底核 →
補足運動野 → 一次運動野 → 運動の実行
外発性随意運動系
感覚情報 → 小脳→ 運動前野 → 一次運動野 → 運動の実行
パーキンソン病では、内発性随意運動系が障害されるが、外発性随意運動系は保たれると言われていますので、効果的というわけです。
このことを逆説的歩行と読んでいます。
どんな手がかりが良いかといいますと、
代表的なものとして手拍子、メトロノーム、カウンティングなどの聴覚刺激、床へのテーピングによる目印、トイレ内や部屋の掛け時計などの目印を用いた視覚刺激(一度、視線を外させる)、患者の体へのリズミカルなタッピングによる触覚刺激などが成果をあげています (Keus et al 2007).
cue以外にはすくみ足の軽減としてどんな方法があるかと言うと、
① 横歩きは比較的障害されるのが遅れるため、一度横歩きをしてから前に進む。
② 左右どちらかの足を一度後ろに引いてから、その引いた足を前に出して歩き始める。
③T-caneの先端に進行方向と直角に交わるような棒を取り付け、それをまたぐように歩く(視覚刺激)。
④動作手順の復唱(右足出す→右足かかとつける→右足つま 先つける)。
⑤踵部に1~2㎝の補高を利用したり、杖を通常より高くする。
住宅改修アプローチ
環境設定は超大切です。
H-Y stageの重症度によって治療戦略も異なります。
臨床で経験しますが、歩けるのに起き上がれないパーキンソン病患者がいます。
まず、寝返り、起き上がりから介助レベルとなっていくようです。
障害が軽度の場合は後進トレッドミル歩行なども姿勢改善に効果はありそうです。
姿勢改善を目指すためのトレーニングの一部。
ストレッチ、筋力増強訓練も大切です。
パーキンソン病患者では骨盤が後傾します。
前傾させるためには、脊柱起立筋、腸腰筋の強化が必要です。
4つのループにおける治療戦略
大脳基底核障害の運動療法として大切な考え方です。
(岐阜脳卒中リハビリテーション研究会HPから引用)
運動ループの障害
外発性随意運動系を利用する(視覚・聴覚・触覚)。
眼球運動ループの障害
外部刺激の少ない環境設定(自室でのリハ)。
前頭前野ループの障害
動作手順・時間配分を考慮した運動療法の提供。
情動ループの障害
獲得したい動作を出来るだけ簡略化した上で、その動作獲得の際には報酬(賞賛)を適切に与え強化学習を図る
最後に大切な軸となる考え方です。
「パーキンソン病だからといって運動や生活を制限しないように、活動量低下を予防し、転倒の恐怖心を取り除き、身体活動の向上に努めるように教育することが大切。」(パーキンソン病治療ガイドライン2011)
これまでの記事
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2月は「リハビリテーション分野における統計学」を杉浦PTと2人で分かりやすくまとめていこうと思います。