Vol.387 介護保険の罠    -タイで福祉用具を販売する-

介護保険によるマジック

残念ながら、タイにおける日本の福祉用具は一部の私立病院を除きほとんど普及していない。

代わりに中国製のシェアが大きいのが現状である。

なぜ売れないのか?

それは価格が高すぎることと品質の良さが広まっていないからだ。

例えば、車椅子を例にあげると、タイでは、タイ製普通型車椅子は10,000円で、およそ1/2〜1/3の値段だ。

大卒の初任給が約6万くらいと考えると、車椅子の価格は月収の1/6だ。

全額自費ということを考えると、非常に高い。

日本の大卒の月給が20万とすると、1/6で3万3千円くらいとなる。

車椅子自体、かなりの高級品だということが分かる。

しかし、日本は介護保険により、安くレンタルで借りることができる。

介護保険は魔法のようなものだ。

タイの薬局で売っている福祉用具

私がタイで撮影した動画はこちら→IMG_1333

なぜ、ここまで価格差があるかだが、ひとつに海外では介護保険がない国がほとんどで、全額自費で、一部の障害者を除き福祉用具を購入しなければならない。

つまり、安くしないと売れないのだ。

一方、日本は前述したように介護保険で、安くレンタルできる。

一ヶ月あたり およそ500円で車椅子はレンタルできる。

日本で車椅子を使用している多くは高齢者で、そのほとんどが介護保険を使用している。

介護保険利用者が増えれば、単純に考えれば福祉用具会社は儲かるだろう。

利用者も介護保険のレンタルのために、商品を価格重視で選ぶ必要もない。

日本の商品の質が高いことは、誰もが認めている。

しかし、これから高齢化が進むアジアに進出しようと思っても、残念ながら価格の影響で、富裕層にしかなかなか売れない。

富裕層に売るためにはどうすればいいのか?

薬局に日本の福祉用具を置いてもらっても残念ながら売れないだろう。

日本では介護保険があり、ケアマネジャーがキーパーソンとなり購入を促すが、タイではそのような立場のポジションは今のところない。ソーシャルワーカーはいるが、福祉用具などの知識はほとんどない場合が多い。

タイでの販売キーパーソンは誰だ?

おそらく医師だ。

トップダウンのタイでは医師の権力はとてつもなく大きい。

退院後に、入所サービスや通所サービスがないことからも、入院しているときに、医師が日本の商品を患者に紹介してもらう方法が一番効果的なのかもしれない。

賄賂国であるタイ

医師が日本の製品を気に入ってくれて、患者に紹介してくれれば話は早いが、日本に留学経験のあるタイ人医師はごくわずかである。

タイは賄賂国という話はよく聞く。渡してはダメだが、賄賂を利用して販売チャンネルを広げる場合も実際多いようだ。

ショールームに力をいれる

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本書でも、営業の最重要拠点はショールームと位置付けている。

個人的な意見だが、タイでも車椅子を買ってもらうのではなく、生活に関する幅広いアドバイスをしたり生活空間をデザインしていくと良いのかもしれない。

建築関係業者との連携はキーとなる可能性がある。

寄付文化が販売の妨げになる

タイには徳を積む文化がある。

早朝の市場では、オレンジ色の袈裟をまとった僧侶に手を合わせていている光景を目にする。良いことをすれば来世の幸せが保証されると思っているため、寄付などにも積極的だ。

私が活動していた障害者施設でも、大量の車椅子やオムツの寄付が頻繁に届いていた。福祉用具は無料でもらえるため、自分で買うという感覚も持っていない場合がある。

と、挙げたらキリがない。また、来週からタイなので、また情報を更新していきたい。

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