Vol.390 第2回オーストラリアスタディーツアーを終えて 

なぜ、あなたはエベレストに登りたいのか?

そこにエベレストがあるからだ。

なぜ、あなたはオーストラリアに行きたいのか?

そこに会いたい人がいるからだ。

第二回オーストラリアスタディーツアーを開催

日本のPTライセンスを取得後、オーストラリアのカーティン大学で学び直し、オーストラリアのPTライセンスを取得し、PTクリニックで働きながら、筋骨格系の修士号を今年取得した江戸英明先生(このブログは絶対に読んでください)とカーティン大学2年生のTAKAくんに大変お世話になり無事に開催できた。

海外で活躍している日本人理学療法士がどんな思いで海を渡ったか、将来的にどんなvisionを持っているのかなど、状況は違うが、私自身もタイに2年間いたこともあり気になっていた。二人とも将来的に日本のPT協会に対して何かしら還元したい気持ちを持っていた。

もし、いつか開業権が日本でも認められるときがくれば、彼らの力はとてつもなく大きいだろう。オーストラリアも最初から開業権があったわけではなく、1976年からで、1人の女性理学療法士の活動が大きかったと聞いている。誰かが動かないと何も変わらない。

第一回オーストラリアスタディーツアーの様子はこちらから

オーストラリアの理学療法に関してはこちらから

1:なぜ、日本ではなくオーストラリアへ? 理学療法士(PT)大学院進学の動機   -連載第1弾-

2:なぜ、日本ではなくオーストラリアへ?理学療法士(PT)大学院のカリキュラム -連載第2弾-

3:なぜ、日本ではなくオーストラリアの理学療法士(PT)養成校へ? カリキュラム、学費などについて -連載第3弾-

4:なぜ、日本ではなくオーストラリアの理学療法士(PT)養成校へ?-生活の楽しいこと・辛いこと  -連載第4弾-

 

サー・チャールズ・ガードナー病院見学



参加者の声

各病棟に理学療法士が配置され、看護師、医師と連携をとり、退院や治療を進める役割になっているとのことでした。そのため、毎朝全患者のカンファレンスを行い具体的な現状、治療内容、退院時期について話し合いを持たれているようです。形上でのカンファレンスではなく、患者の状態把握、病棟運営、他職種との連携など、理学療法士にはリハビリだけ行なうのではなく、全体を包括的にマネジメントする力が必要であると感じました。

また、日本ではリハビリの介入には医師の指示が必要であり、私が勤務する病院では医師の安静度の範囲内でリハビリが行われています。しかしチャーリーズでは急性期でも医師の安静度が設定されておらず、すべて理学療法士が判断し活動性を上げていきます。そのためすべての介入または非介入も科学的根拠に基づいた行動でありそれを医師、看護師に説明したり、進言する必要があります。患者の状態すべてを把握し退院に向け介入していく、それに伴う責任の重さと理学療法士に対する信頼、それを裏打ちするオーストラリアの理学療法士のクオリティに驚愕しました。

最後にオーストラリアの文化に驚きがありました。それは自分の病気は自分で治すという考えです。日本はどちらかというと治療をしてもらうという受動的な印象がありますが、患者が自分の身体をマネジメントするように理学療法士が患者をマネジメントするということに重きを置いていると感じました。保険制度などの違いもありますが、こういった文化的な違いが大きいと感じました。

ただ、オーストラリアの病院の方が良いということではなく、オーストラリア内でも拠点病院が足りていなかったり病院にかかるのに予約が必要であったり、PTであれば他業種に職域が侵略されてきているなど、各国異なるがそれぞれに良し悪しがあり、課題があるのだと感じました。

Sir Charles Gairdner Hospital (SCGH)とは?

Sir Charles Gairdner Hospital (SCGH) is a teaching hospital located in Nedlands, Western Australia.

Opened in 1958,[1][2] it was named in honour of Sir Charles Gairdner, governor of Western Australia 1951–63, and is part of the Queen Elizabeth II (QEII) Medical Centre.[3]

All clinical specialties are provided, with the exception of complex burns, paediatricsobstetrics, and gynaecology. It houses the state’s only comprehensive cancer treatment centre, and is the state’s principal hospital for neurosurgery and liver transplants. The hospital is closely associated with the nearby University of Western Australia as well as Curtin UniversityNotre Dame University, and Edith Cowan University.

Handling over 76,000 admissions annually, SCGH has 600 beds, and treats approximately 420,000 patients each year. As of 2012 some 5,500 staff are employed.[4] In 2009, it was the second hospital in Australia to be awarded Magnet recognition by the American Nurses Credentialing Center. From Wikipedia

 

PTクリニック見学(LIFE READY

見学者の声

クリニックでは見学時に4名の理学療法士が勤務されており、治療は各個人の部屋で行われました。当然英語ばかりの会話であり理解できないことも多かったのですが、1番に感じることは、説明と同意の充実さです。常に何を行なっているか、そしてどういう反応であったか、それが何を示すか、これを行うことでこういうことが起きるリスクがあるが、それでも良いか、等細かく説明し同意を得ていました。

そしてそれは一方向ではなく、患者自身がどう考えているか、どうしたいか、ということを汲み取りながら行われていました。これは、患者教育のひとつで、患者の考えや信条を理解し、意思決定に参加することで治療が受動的でなく、セラピストと患者の共同作業になると感じました。

評価や治療で常に主語は「we」であったことが、それを示していると思います。常に共同で問題に立ち向かい、解決を図ろうとすることが、治療、患者のマネジメントを促進するために重要な要素であり、そしてそれを成し得るクリニカルリーズニングの本当の意味に気づくことができました。

疼痛の講義と問診の実技指導

参加者の声

江戸さんの研修ではまずパワーポイントを使って、ペインマネジメントについての講義を聞かせていただきました。疼痛の神経生理学的な発生機序から痛みを増悪、慢性化させる要因としてのイエローフラッグの話を聞かせていただき、クルにカルリーズニングを行う土台としてのエビデンスの基づいた知識に触れることができました。

そして午後からは、実際の臨床に即し、模擬患者役に対しての問診、評価、意思決定の流れを実際に行い、それについてフィードバックをいただくという大変貴重な研修をさせて頂きました。普段自分では全く気がつかない点を指摘頂き教科書、文献を読んだり研修に参加しているだけでは得られない特別な時間であったと確信しています。自分の臨床を見られるというのは緊張、不安もありましたが、これほど良い勉強法はないと思います。

観光(マーガレットリバー・バッセルトン)

参加者の声

観光では、千と千尋の神隠しのワンシーンのモデルとなったバッセルトンの線路や、ビーチ、広大なワイン畑と多くのワイナリーがあるマーガレットリバーを訪問しました。オーストラリアの大地は遠くまで見渡せ、車の移動中でも壮大な景色を楽しめました。また道路脇には牛や馬、カンガルーを見つけることもできました。

ビーチは非常に美しく、海は透明、強い日差しと真っ青な空、日本では味わえないほど爽快なものでした。ワイナリーは雰囲気のある建物であり多くのワインを試飲し心地よい気分で3本ワインを購入しました。ワインの味は正直わかりませんでしたが、雰囲気を楽しむことができました。旅や研修の疲れを癒すには十分な観光でした。

 

その他の感想 オーストラリアスタディツアー全体を通して

参加者の声

今回ツアーに参加した目的として、オーストラリアでの医療、PTを取り巻く制度や、海外で働くために必要なことを直接お聞きすること、世界基準の筋骨格系に対する理学療法を拝見すること、今後のキャリアップに繋げたい、ということが大きな要因でした。

結論から言うと、これらの目的、期待を上回る情報、経験、変化を得られ、それ以外の部分で大きな価値のあるツアーでした。ツアー内容に含まれている病院、クリニックの見学では、PTとしての制度や知識、技術のインプットが図られ、江戸先生の講義ではクリニカルリーズニングを構築するための基礎知識、評価の組み立てなどを教わりました。その点も非常に価値のあることでしたが、講義や見学以外での、ツアー参加者との出逢い、オーストラリアで働かれている、又は学ばれている方々とのご縁が何より大きなものであったと感じています。

私自身は、今回のツアー参加者の方々とお会いするのは初めてで、初対面の方達と5 日間、宿泊先、移動中、見学中など常に行動を共にするというのは、精神的ストレスのかかる生活であったことは間違いないありません。しかし、この時間こそが最も貴重で重要なものであったと感じています。それは、少人数であったこともあり、たくさんの話ができ、各個人の考えや思いを共有できたことです。自分がやりたいと思い目標にしていたことが、不明確でその覚悟ができていなかったことを気づかせて頂きました。また具体的なアドバイスや物事の考え方を教えていただき、自分自身に向き合い何がしたいのかを考え直す機会になりました。こんな自分に対してたくさんの声をかけてくれた先輩方に感謝と、このご恩を自分の行動で示せるようにしていくことを決意した5日間でした。 文責:野沢哲矢

参加者の成長

タイのスタディーツアーもそうであるが、ただ参加するだけでは意味はなく、スタディーツアーに参加して、参加者が何も感じ、行動するかが大切である。タイのスタディーツアー参加者の中には、青年海外協力隊に応募する方が増えてきている。今回の参加者である野沢哲矢さんは、ツアー期間内で誰がみても成長した。これからが楽しみである。このようなツアーが行動変容に繋がってくれると嬉しい。

江戸さんの腰痛セミナー

6月に仙台と大阪での開催は決定している。詳細はまたアナウンスさせていただきますが、「うちの地方でもやって欲しい」などありましたら、お問い合わせフォームからか江戸さんのTwitterのダイレクトメッセージに連絡いただければと思います。

 

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